子どもに読み聞かせたい絵本は家庭の個性と定番名作のバランスが大切
子どもに読み聞かせたい絵本選びは、家庭の個性と定番名作のバランスの上に成り立つ
<目次>
名作絵本とは、大人が子供の頃に読んだ絵本が古典として残った作品
よく指摘されることですが、絵本を選ぶとき、大人は無意識のうちに「自分が読んでおもしろかった本を子どもにも手渡したい」と考えます。今、20代から40代になった親世代たちは、子どもの頃に、すでに福音館書店の月刊絵本シリーズに親しみ、岩波書店の子どもの本を読んでいました。さらにその親が教育熱心で、読み聞かせや文庫・読書活動などで本に親しんだ人も多いと思います。ランキング入りしている10冊中9冊が60~70年代に発表されたり、邦訳紹介されたりした絵本です。あの時代の子どもを楽しませ、新鮮な感動を引き起こした絵本は、今、古典となって今の世代の子どもたちを喜ばせています。絵本の持つ「世代を超える」特質が見事に表れていると同時に、60~70年代に出されたすぐれた絵本が変わらない力を持って読者をひきつけ続けていることがよく分かります。
絵本は赤ちゃんにとっても大人とのコミュニケーションツール
ランキング上位には3歳以下の乳幼児向け、下位には少し対象年齢が上の絵本がランクインしています。長く絵本と離れていたお父さんやお母さんが、わが子に絵本を初めて読もうと思うのは、赤ちゃん絵本の定番である『いないいないばあ』や『はらぺこあおむし』を楽しみ始める1歳半前後なのかもしれません。子どものために手に入れた絵本に、ふっと自分の幼少期の思い出がかきたてられる、あるいは、古典的地位を獲得している絵本の底力に自分が魅了されてしまう。そんな姿が目に浮かんできます。わが子を喜ばせたいという純粋な気持ちで初めての絵本が選ばれていくのでしょうね。
昔話の語りの力は 聞き手である子供を心から満足させる
ランクインしている絵本の中で、『おおきなかぶ』『てぶくろ』『三びきのやぎのがらがらどん』は、それぞれロシア、ウクライナ、北欧の民話です。『おおきなかぶ』や『てぶくろ』はストーリー展開のふくらみとオチのつけ方が見事ですし、『三びきのやぎのがらがらどん』には、三という数字や主人公たちの幸福に、昔話の作法がありますね。口承の伝統の上に立つ昔話は「読み聞かせ」にふさわしく、聞き手を心から満足させるに違いありません。名作絵本第10位『葉っぱのフレディ いのちの旅』
フレディという名前の葉っぱが春に大木の梢に生まれ、冬に枯れて散っていくまでを追いながら、いかによりよく生きていくかが死の準備になるのだと悟ります。指南役のダニエルや仲間の葉っぱたちとのやりとりがポイントです。絵と文章にさらに写真が添えられていて、メッセージ性がより強くなっています。自然現象としての葉っぱの変化に着目しながら、それを人生になぞらえているところに、多くの人が共感するのでしょう。お芝居などにもなり、ある時期には社会現象にもなったので記憶されている方も多いのではないでしょうか。■『葉っぱのフレディ いのちの旅』
作:レオ・バスカーリア
訳:みらいなな
出版社:童話屋
出版年:1982/1998.10
名作絵本第9位『三びきのやぎのがらがらどん』
誰もが知っているといっていい『三びきのやぎのがらがらどん』では、大中小の3匹のヤギが丘に草を食みに行く途中の谷川で、おそろしいトロルに出会います。小さいがらがらどん、中くらいのがらがらどんが通ったあとに、大きいがらがらどんが来てトロルと真っ向勝負。いさましい戦いの末に、トロルをやっつけてしまいます。3匹の仲の良さと、トロルをやっつける爽快感、その後に山の上でたらふく食べる草のごちそうなど、緊張の後の幸福感がしみじみ感じられる作品です。大きいヤギを食べようと欲をかいたトロルも、ちょっぴり気の毒ですね。「3倍楽しむ『三びきのやぎのがらがらどん』」の記事もご覧ください。
■『三びきのやぎのがらがらどん』
北欧民話
え:マーシャ・ブラウン
やく:せたていじ
出版社:福音館書店
出版年:1965.7
名作絵本第8位『てぶくろ』
雪がしんしんと降る森で、おじいさんが手袋を片方落としていってしまいました。そこに駆けてきたネズミが手袋の中で暮らすことにします。くいしんぼねずみ、ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ。手袋の家に入れてもらいたい動物たちがどんどん増えていきます。最後は、のっそりぐまやきばもちいのししまでやってきて大変なことになります。手袋の家はどうなってしまうのでしょう……。
ファンタジーと現実の切り替わりが見事な作品だという高い評価を受けています。小さな人間の手袋がそれだけの動物をつめこめる家になっていく、想像力の広がり。そして、最後にぱちんと切り替わって、現実に一気に引き戻されるのですが、その収束がすばらしい効果を上げています。
■『てぶくろ』
ウクライナ民話
え:エウゲーニー・M・ラチョフ
やく:うちだりさこ
出版社:福音館書店
出版年:1965.11
名作絵本第7位『エルマーのぼうけん』
『エルマーのぼうけん』は、絵本というより幼年童話の名作ですが、イラストが物語の中でとても効果的に使われ、見返しの地図なんて、眺めているだけでもわくわくします。みかん島に旅行に行ったネコから、どうぶつ島に囚われているかわいそうな竜の子の話を聞いたエルマーは、その竜を助けてやろうと出かけていきます。歯ブラシ、くし、チューインガム、長靴、リボン……。一見、めちゃめちゃに見える持ち物が、どうぶつ島の荒っぽい動物たちに向かっていくときに役立ちます。いったい、どんな風に? パズルのように、持っていったものがどんどん使われていく過程に拍手喝采です。語り手がエルマーの息子で、お父さんの「エルマー・エレベーター」の子どもの頃の冒険を聞き語る、という枠構造もひねりがありますね。
■『エルマーのぼうけん』
作:ルース・スタイルス・ガーネット
訳:わたなべしげお
出版社:福音館書店
出版年:1963.7
第6位『はじめてのおつかい』
みいちゃんは5歳です。ママは赤ちゃんのお世話で手が離せないので、ある日、生まれて初めて一人でお使いに行くことになります。向かう先は坂の上の「筒井商店」(作者の苗字ですよ)。100円玉を2つにぎりしめて、みいちゃんは無事に牛乳を買うことができるでしょうか。こういうご時勢に、未就学児をお使いに出すのは問題がある昨今、ひとつの時代表象の絵本ともいえるでしょう。すでに、送り出すママのほうの気持ちで読んでしまいますが、みいちゃんのドキドキ感と達成感に、読み終わったあと、ふわあっと暖かい気持ちになること間違いなしです。この町並みのモデルは、昔の自由が丘のあたりなのだとか。坂の途中の町内掲示板に、さりげなく「はやしあきこ」なんて書いてあるのも作者のユーモアでしょう。後ろ姿が雄弁な子どもを描かせたら、林明子さんは天下一品ですね。
■『はじめてのおつかい』
さく:筒井頼子
え:林明子
出版社:福音館書店
出版年:1976.3
名作絵本第5位 ノンタンシリーズより『ノンタン ぶらんこのせて』
ノンタンシリーズの第1作は『ノンタン ぶらんこのせて』。現在、ノンタンシリーズは、ボードブックや大型絵本など様々な形で読まれています。1970年代にノンタンが初めて登場したとき、そのやんちゃっぷりと、絵本の主人公らしからぬいたずらっ子であったことが賛否両論を巻き起こしたとか。しかし、ノンタンは、同じ立場である子どもたちから圧倒的な支持を受けたそうです。『ノンタン ぶらんこのせて』でも、ノンタンは友達が待っているにもかかわらず、全然ブランコを譲りません。「たちのりするんだもん」「かたあしのりするんだもん」と言ってブランコを独り占めのノンタンに、みんなが「ずるいよ ずるいよ」と怒ります。
決着のつけ方がすごくいいのです。ああ、子どもの世界ってこうなのだなあ、と。ちょっぴりごうじょっぱりのノンタンがすっと友達の中にまざっていくところに幼児の世界が見事に表現されています。
■『ノンタン ぶらんこのせて』
作・絵:キヨノサチコ
出版社:偕成社
出版年:1976.8
名作絵本第4位『はらぺこあおむし』
エリック・カールの色彩感覚とコラージュの技法による仕掛けの楽しさが余すところなく詰まった傑作です。エリック・カールは、この作品で世界中に知られるようになり、『はらぺこあおむし』は絵本やボードブックだけでなくキャラクターグッズにもなって親しまれています。お月様が見守る、葉っぱの上に生まれたばかりの小さな卵。孵った青虫は、いろんなものを食べて大きくなるのですが、ちょっといろいろなものを食べすぎでは……?! 曜日ごとに食べるものが変わり、なおかつ1つずつ増えていきます。土曜日はいくらなんでも食べすぎ!なのですが、これがまたなんとも美味しそうなこと。スイカやチーズやソーセージなど、いろいろな食べ物に、青虫がかじって通り抜けていった穴が開いているのも、愉快な仕掛けです。「絵本の魔術師 エリック・カール」や「しかけと色彩!エリック・カール」もご覧ください。
■『はらぺこあおむし』
さく:エリック・カール
やく:もりひさし
出版社:偕成社
出版年:1969/1976.5
名作絵本第3位『いないいないばあ』
最近は何人もの作家さんが「いないいないばあ」遊びの絵本を出していますが、その元祖とも言っていい1冊です。特に赤ちゃんに向けた「松谷みよ子 あかちゃんの本」シリーズの中で、最も人気のあるのが『いないいないばあ』です。にゃあにゃが ほらほら いない いない……ばあこんどは だれだろいない いない……ばあ
この絵本を喜ばない赤ちゃんはほとんどいないのではないでしょうか。「いないいないばあ」の遊びが実体験でもすごく好きなある特定の時期に、この絵本はさらに威力を発揮するでしょう。単純な「いないいないばあ」を「ページをめくる」という行為とリンクさせ、絵本の可能性を1つ広げた作品といえます。赤ちゃんを楽しませようとする動物たちの表情がこれまたすばらしいです。
■『いないいないばあ』
文:松谷みよ子
画:瀬川康男
出版社:童心社
出版年:1967.4
名作絵本第2位『おおきなかぶ』
おじいさんが丹精こめて育てて、大きなカブができました。甘くておいしい、とてつもなく大きいカブです。抜こうと思ってもなかなか抜けないので、おじいさんはおばあさんを呼んできて、おばあさんはまごを呼んできて……。それでもカブは抜けません。「うんとこしょ どっこいしょ」
リズムという言葉がこんなにぴったりくる絵本も珍しいでしょう。だんだんクレッシェンドになっていく音楽的な喜びと、「カブを抜く」という単純な作業に読み手もついつい力が入ってしまう臨場感があります。劇や人形遊びでも人気のある作品ですね。
■『おおきなかぶ』
再話:内田莉莎子
画:佐藤忠良
出版社:福音館書店
出版年:1962.5
名作絵本第1位『ぐりとぐら』
ぼくらの なまえは ぐりと ぐらこのよで いちばん すきなのはおりょうりすること たべることぐり ぐら ぐり ぐら青い帽子のぐりと赤い帽子のぐらは大の仲良しのふたごの野ねずみです。大きなかごを持って森の奥へ行った2匹は、なんと、巨大な卵を見つけました。この卵で、いったい何をつくろうかしら?「ぐりとぐらのカステラ」といえば、絵本に出てくる食べ物でも1,2を争う「食べたい!」おやつかもしれませんね。「みんな大好き、ぐりとぐら!」の記事もご覧ください。
■『ぐりとぐら』
さく:なかがわりえこ
え:おおむらゆりこ
出版社:福音館書店
出版年:1963.12
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